インターネット上の掲示板やSNSでは、「トレセン選考は所属チームの力関係で決まる」「政治的な忖度がある」といった書き込みが後を絶ちません。こうしたネット上の噂と現場の実態には、どのような乖離があるのでしょうか。
現場取材から浮き彫りになるトレセン落ちた理由の真相は、陰謀論とは程遠い育成年代特有のバイアスにあります。最大の盲点は「相対的な早熟度(早生まれ問題)」です。小学生年代における4月生まれと翌年3月生まれの身体発育の差は、体力測定で1〜2学年分の開きを生むことがあります。選考員がいくら「技術や判断」を見ようと努めても、無意識のうちにストライドの広さやコンタクトの強さに目が奪われてしまう構造的課題は完全には解消されていません。
もう一つの落とし穴は、「所属チームでの王様プレー癖」です。自チームでは絶対的なエースとして全ボールを集めてもらい、自由にドリブルしていれば評価されていた子が、トレセン選考会で同じことをしてボールをロストし、酷評されるケースが多発しています。トレセンが求めているのは「組織の中で個を活かせる選手」であり、味方を道具のように使うドリブラーではありません。
また、トレセン合格のメリットについても過大評価は禁物です。合格すればハイレベルな環境で刺激を受け、強豪クラブからスカウトの目に留まりやすくなるのは事実です。しかし、トレセンに選ばれなかったからといって将来プロになれないわけではありません。元日本代表の中村憲剛氏をはじめ、小学生年代でトレセンに選出されず、高校・大学年代で大きく花開いたトップ選手は数え切れないほど存在します。「トレセン落選=サッカー人生の終わり」と捉えるのは、育成の現場を知らない大人の致命的な勘違いです。