市議会議員という職業を選択する上で、避けて通れないのが経済的な現実です。議員報酬の構造と、立候補に伴う市議選の供託金と費用の実態を客観的な数値から読み解いていきます。
立候補時に法務局へ預け入れる供託金は、公職選挙法により一般市で30万円、政令指定都市で50万円と規定されています。これは売名行為や無責任な乱立を防ぐための担保金であり、得票数が「有効投票総数 ÷ 議員定数 ÷ 10」(供託金没収点)を下回った場合、全額が没収され自治体の財源に編入されます。逆に言えば、この法定得票ラインを越えさえすれば、落選した場合でも供託金は全額返還されます。
選挙戦そのものにかかる総費用は、陣営の規模によって50万円から300万円程度と大きな幅があります。しかし、日本の選挙には「選挙公営制度」が存在します。公費負担の対象となるのは、選挙運動用ポスターの印刷代、選挙公報の掲載、街頭演説用の選挙カー(車両レンタル・燃料代・運転手への報酬)、および選挙運動用ビラ(証紙貼付ビラ)の作成費用です。得票数が供託金没収点以上であれば、これらの基本費用は自治体から直接業者へ支払われます。したがって、事務所費や印刷物の超過分、ウグイス嬢やスタッフへの実費弁当代などを賢く抑えれば、自己資金100万円未満でも十分に戦い抜くことが可能です。
一方、議席を獲得した後の市議会議員の年収実態は、自治体の人口規模や財政力指数によって大きな格差が存在します。議員が受け取るのは法的には給与ではなく「議員報酬」と呼ばれ、これに期末手当(年2回・約3〜4か月分)が加算されます。政令指定都市では月額報酬が60万〜80万円程度に達し、年収ベースで1,000万円前後に上る自治体も珍しくありません。しかし、人口5万〜10万人規模の一般市では月額35万〜45万円、期末手当を含めた額面年収は500万〜650万円前後が平均的な相場です。
これらに加え、調査研究活動のために交付される「政務活動費」がありますが、これは私的な生活費ではなく、1円単位での領収書添付と公表が義務付けられた使途限定の資金です。また、議員には厚生年金の適用がない自治体が多く、国民年金と国民健康保険料の支払いが自己負担となる点も、手取り金額を考える上で見逃せない要素です。