それでは、国の施策を司る行政の場では、森と林はどのように区別されているのでしょうか。国の林政を統括する林野庁や、森林法をはじめとする法制上の見解を確認すると、意外な事実が判明します。
林野庁の公的文書および森林法第2条において、個別の「森」と「林」を独立した別々の用語として厳密に数値で切り分ける規定は存在しません。行政・林業統計の場では、樹木が集団で生育している土地を一括して「森林(しんりん)」と定義し、管理しています。森林法において森林とは「木竹が集団して生育している土地」および「その土地にある樹木・竹材」、さらには「林道などの附帯地」を指します。
そのうえで、林野庁の統計資料や「森林・林業白書」では、成り立ちの違いによって明確に以下の2つに区分されています。
- 人工林(育成林):木材の生産や国土保全を目的として、人間が苗木を植栽し、下草刈りや間伐などの保育を行って育てた森林。スギやヒノキ、カラマツなどが主体の単一樹種で構成されることが多い。
- 天然林(自然林):人為的な植栽によらず、天然の種子の落下や萌芽(ひこばえ)によって自然に更新・維持されている森林。ブナやミズナラ、シイ、カシなど多様な樹種が混交する。
2026年現在公表されている林野庁の最新統計データによると、日本の国土面積約3,780万ヘクタールのうち、森林面積は約2,500万ヘクタール(国土の約67%)に達します。このうち人工林が約1,000万ヘクタール(約4割)、天然林が約1,340万ヘクタール(約5割強)を占めています。語源における「林=生やしたもの(人工林)」「森=盛り上がった自然(天然林)」という概念は、現代の森林行政が区分する生態系の骨格と見事な一致を見せています。