西山太吉の妻・啓子の壮絶半生|沖縄密約事件のバッシングと家族の現在

西山太吉の妻・啓子の壮絶半生|沖縄密約事件のバッシングと家族の現在

話題沸騰中の 西山太吉の妻・啓子の壮絶半生|沖縄密約事件のバッシングと家族の現在について、詳しいまとめを分かりやすく掲載しています。

西山事件を広く一般に知らしめた金字塔が、作家・山崎豊子氏による長編小説『運命の人』です。テレビドラマ化もされ、本木雅弘氏演じる主人公・弓成亮太の妻「弓成由起子」(ドラマ版では松たか子氏が熱演)の健気で気品ある佇まいは、多くの視聴者の涙を誘いました。

劇中の由起子は、夫の裏切りに深く苦悩しながらも、名門出身の貞淑な妻として夫の信念を信じ、献身的に支え続ける「理想化された昭和の女性像」として描かれています。しかし、現実の西山啓子さんの実像は、そのような文学的フィクションの美談だけに収まるものではありませんでした。

ノンフィクション作家の澤地久枝氏が著した『密約―外務省機密漏洩事件』や、元朝日新聞記者の諸永裕司氏による緻密な取材記録、そして近年に公開された啓子さん本人の手記によれば、彼女が抱えていたのは純粋な献身などではなく、生身の人間としての激烈な怒りと矛盾でした。

「夫を許したわけではない」「家庭を壊した夫の軽率さを軽蔑する」という本音を抱きながら、一方で「ここで私が夫を見捨てれば、卑劣な国家権力の思惑通りに西山太吉という人間が完全に抹殺されてしまう」という、冷徹なまでの大局観を持っていたのです。ネット上では時折「妻はなぜすぐに離婚しなかったのか?」「仮面夫婦だったのではないか」といった無理解な憶測が囁かれますが、現実はそのどちらでもありません。啓子さんは、愛憎を超越した次元で「国家による不当な暴力に屈しないための共同戦線」を夫と結んだと言えます。

山下 哲也
著者

山下 哲也

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。