戦時中のトラウマを描きながらも、高畑監督の視線は従来の「被害者主体の反戦映画」とは一線を画している。劇中において、B-29に乗るアメリカ兵の顔が描かれることはない。空を覆う巨大な銀色の機体は、感情を持たない「巨大な自然災害」のように淡々と、機械的に爆弾を落とし、去っていく。
高畑は生前、作品を通じてアメリカ軍を単なる「悪魔」として糾弾することを意図的に避けたと語っている。むしろ描きたかったのは、極限状態に置かれた人間がどのように孤立し、社会から切り離されていくかというプロセスの冷酷さだ。ポスターに隠されたB-29の影は、兄妹がいくら無邪気に戯れようとも、彼らを包む現実の世界が逃れようのない「戦時下の支配」にあることを静かに提示している。