伊藤沙莉の経歴を振り返ると、彼女は子役出身のキャリアを持ちながらも、決して耳触りの良い安全な作品ばかりを選んできたわけではありません。インディーズ映画や社会の暗部を切り取った挑戦的な作品に積極的に身を投じてきました。
例えば、内田英治監督が地方都市の闇を描いた映画『獣道』(2017年)や、風俗のデリヘル待機所で働く女性たちの現実を生々しく描いた『タイトル、拒絶』(2026年)などが挙げられます。『タイトル、拒絶』で伊藤が演じたのは、風俗嬢たちを冷徹に見つめながらも自身の中に鬱屈を抱えるデリヘル事務所のスタッフ・カノウ役でした。映画のテーマやビジュアルポスターの過激さから「大胆な濡れ場があるのではないか」と憶測を呼びましたが、本編で彼女が性的な露出を伴うベッドシーンを演じる場面は皆無です。
ラブストーリーの金字塔となった映画『ちょっと思い出しただけ』(2026年)でも、タクシードライバー役として繊細な大人の恋愛模様を表現していますが、そこにあるのは情緒的な触れ合いと卓越した表情の演技であり、肉体的な露出を売り物にした演出とは明確に一線を画しています。伊藤沙莉の映画代表作を精査しても、彼女が演じているのは露出ではなく、登場人物の「剥き出しの感情」であることが分かります。