多くのリスナーが抱く最大の疑問が、「男性ボーカルを中心としたバンドになぜ既婚女性を表す『Mrs.』がついているのか」という点です。英語圏において「Mrs.」は明確に既婚女性を指す敬称であり、一見すると男性バンドのネーミングとしては矛盾を孕んでいるように見えます。
この命名には、大森元貴の卓越したバランス感覚とブランディングの意図が明確に反映されています。当時、「GREEN APPLE」という言葉だけでは「爽やかすぎて可愛らしい印象になりすぎてしまう」という懸念がありました。そこで、大人の落ち着きや重み、そしてどこかミステリアスなニュアンスを加えるために模索されたのが敬称の付加でした。
候補には「Mr.」も挙がりましたが、あえて「Mrs.」を選んだ決定的な理由は「中性的な柔らかさと包容力」の獲得にありました。「Mr.」にすると男性的な力強さや硬さが前面に出てしまうのに対し、「Mrs.」を選ぶことでジェンダーの境界を曖昧にし、女性的な繊細さや母性のような温かみを楽曲の世界観に宿らせることができると考えたのです。この選択は、後に大森が紡ぎ出す性別や世代を超えて人々の心に寄り添う歌詞表現や、フェーズ2で見せる華麗なメイクアップ・ビジュアル表現の根底にある美学とも完全に一致しています。