一般的なチョコレートが口の中でとろけるのは、主原料であるカカオバターの融点が約28℃〜33℃と人間の体温よりわずかに低く設定されているためです。つまり、真夏の室温(30℃以上)や直射日光下では、物理現象として溶け出すのが自然な状態といえます。
では、なぜ「溶けないチョコ」は猛暑でも原形を保ち続けることができるのでしょうか。食品科学における溶けないチョコの仕組みには、大きく分けて3つの独自アプローチが存在します。
第1のアプローチは、業界で「スケルトン構造(糖骨格)」と呼ばれる耐熱技術です。チョコレート生地中の微細な砂糖粒子同士を微量の水分で結合させ、網目状の立体ネットワークを構築します。これにより、周囲のカカオバターが熱で液体化しても、糖のフレームが骨組みとなって全体の形状を強固に支え、手についてもベタつかない特性を生み出しています。
第2のアプローチは、原材料における油脂設計の変更です。融点の低い純粋なカカオバターの一部を、40℃〜50℃前後まで溶けない植物性油脂(パーム油やヒマワリ油などを分別・エステル交換した加工油脂)に置き換える手法です。これにより、過酷な輸送環境や熱帯地域向けの輸出仕様にも耐えうる耐熱性チョコレートが実現します。
第3のアプローチは、森永製菓の「ベイク(BAKE)」などに代表される「表面焼成(ベイクド技術)」です。チョコレートの外側を高熱で焼き固めることで、外側はカリッとした耐熱殻となり、手で持っても指の熱が内部に伝わりにくくなります。各メーカーはこれらの技術を巧みに組み合わせ、従来の口どけを極力損なわずに耐熱性を極限まで高めています。