1985年10月7日、テレビ朝日の夜22時枠で産声をあげた『ニュースステーション』は、それまでの「原稿を読み上げるだけ」だったアナウンサー主導の報道番組の概念を根底から覆しました。久米宏氏が持ち込んだのは、ラジオの生放送で培われた圧倒的なテンポ感と、視聴者目線に立った感情豊かなリアクションでした。
番組が語り草となっている最大の理由の一つが、1988年10月19日の「プロ野球10.19」生中継延長です。ロッテオリオンズ対近鉄バファローズのダブルヘッダー第2試合、近鉄のパ・リーグ優勝がかかった死闘において、通常編成を急遽変更して試合の生中継を番組内で決行しました。久米氏自らが「ニュースを中断して野球中継を続けます」と宣言し、試合の結末をリアルタイムで届けたこの英断は、報道とエンターテインメントの境界を鮮やかに打ち破った伝説のエピソードとして今も語り継がれています。
また、政治や社会問題に対する辛口かつ直截なコメントは、時に「偏向報道」「過激すぎる」との批判を呼びながらも、お茶の間の圧倒的な支持を獲得しました。1994年の政治改革関連法案の成立前後や、1995年の阪神・淡路大震災、オウム真理教事件などの大事件に際しては視聴率が跳ね上がり、歴代最高視聴率34.8%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)を記録。国民的な情報インフラとしての地位を確立したのです。