日本の資本市場において、白石氏の存在感を決定づけたのが2023年末から2024年初頭にかけて展開された買収合戦でした。その引き金となったのは、親会社であったパソナグループによる保有株売却の動きです。パソナはグループの財務基盤強化と事業再編を目的として、保有していた約51%のベネフィット・ワン株式の現金化を模索していました。
当初、名乗りを上げたのは医療IT大手のエムスリーでした。2023年11月、エムスリーは1株あたり1600円での友好的TOBを発表。パソナもこれに応募する合意を結んでおり、市場関係者の多くはディール成立を確実視していました。しかし、この提案は当時の市場株価から大幅なディスカウントとなっており、少数株主の利益を軽視しているのではないかという批判が噴出します。
その膠着状態を打ち破ったのが、第一生命ホールディングスによる電撃的な対抗提案でした。第一生命は2023年12月、1株あたり1800円以上、最終的には2123円という破格の買収価格を提示。買収総額は約2900億円に達しました。従来の国内M&Aでは珍しかった「同意なき対抗買収(カウンターTOB)」の形を取りながらも、圧倒的な企業価値評価を前に、エムスリーは対抗を断念して撤退を表明。ベネフィット・ワン取締役会およびパソナグループも最終的に第一生命の軍門に降ることとなりました。