あまりにも強烈なハマり役を得た役者には、常に抗いがたい宿命がつきまとう。眉間に深くシワを寄せ、官僚組織の冷徹な壁と戦い続けた男、室井慎次。このキャラクターは日本中の誰もが知る象徴となった一方で、演じる側にとっては巨大すぎる影でもあった。あまりにハマり役であったがゆえに、どこへ行っても「室井」として見られる葛藤。自分自身の演技の引き出しを閉ざしてしまうのではないかという恐怖と、男は長年戦い続けていたのだ。
しかし、彼は逃げなかった。役を否定するのではなく、自らの人生の年輪を室井という人物に投影し続ける道を選んだ。その不屈の決断こそが、日本の娯楽史に類を見ない深度を持つキャラクターを育て上げ、国内の映画界に揺るぎない偉大な足跡を刻む結果となったのである。