誰もが一度は思い描く「虹の中に入ってみたい」という願望。結論から言えば、虹の中に立ってもカラフルな光のトンネルが見えることはありません。虹が発生しているまさにその場所に自分が移動したとしても、目の前に広がるのは「ごく普通の霧雨や水滴が舞う空間」だけです。
虹は空に固定された物体ではなく、空気中の微細な水滴が太陽光を跳ね返すことで生まれる「光の軌跡」です。観測者の背後に太陽があり、前方に水滴が存在するとき、太陽・観測者の目・水滴が作る特定の角度(約40〜42度)に光が集まったときだけ、私たちの網膜にあの美しい円弧が結像します。
そのため、虹に向かって歩いていくと、観測者の移動に合わせて虹自体も同じ距離だけ奥へと逃げていきます。仮に他者から見て「あの人が虹の中に立っている!」という位置にいたとしても、本人の視界からは別の場所に虹が見えているか、あるいは角度がズレて虹そのものが消えて見えます。この「決して触れられない」という性質こそが、虹が持つ永遠の神秘性の根源です。