半世紀以上にわたって国民生活に定着していた紙やプラスチックの健康保険証を、なぜ国は廃止へと舵を切ったのでしょうか。政府関係資料や社会保障審議会の議事録を紐解くと、廃止の背景には「なりすまし・不正利用の防止」と「医療DXの推進」という2つの明確な理由が存在します。
従来の健康保険証は顔写真が付いていないものが大半であり、紛失・盗難時に第三者による不正利用や、不法滞在者による使い回しが長年問題視されていました。社会保険庁時代から続く名寄せの甘さや身元確認の脆弱性を根本から是正するため、顔認証付きのマイナンバーカードへの統合が急務とされた経緯があります。
また、国民健康保険証の切り替え経緯を見ると、就職・転職・退職や引越しに伴う保険証の差し替え作業に自治体や企業の健康保険組合が年間数百億円規模の発行コスト・郵送料を投じていた事実が浮かび上がります。マイナンバーカードを共通基盤に据えることで、転職時にも保険証の切り替え待ち期間なしで受診できる環境を整備し、過去の処方薬データや特定健診結果を全国の医師・薬剤師と安全に共有するインフラ構築が最大の目的でした。