医学論文データベースのPubMedを精査すると、筋タンパク質合成(MPS)のシグナル伝達に関するパラダイムシフトが起きていることが分かる。国際スポーツ栄養学会(ISSN)が発表した包括的なポジションスタンドにおいても、EAAの突出したロイシン濃度が筋合成スイッチ(mTORC1)を強烈に押し込む事実が追認されている。
しかし、スイッチを押すことと、実際に家屋を建てるための建材が揃っていることは同義ではない。EAAは優れた着火剤だが、非必須アミノ酸を一切含まない。筋肉という構造物を合成する全アミノ酸のプールが枯渇していれば、合成反応は途中で失速する。近年の対照実験データは、適切な量のホエイプロテインを摂取した場合と、EAAを単体で摂取した場合で、24時間単位の正味の筋肥大蓄積量に有意な差が見られないケースを複数報告している。短期的なスパイクだけを追う短絡的なサプリメント信仰に、学術界から冷や水が浴びせられた格好だ。