マカトン法は、無秩序に単語を覚えるものではありません。日本マカトン協会が策定した体系では、日常生活で最も生存・意思伝達に必要な概念を集めた「コア語彙」がステージ1からステージ8まで段階的に配置されています。
初学者が最初にマスターすべきなのは、日常の要求や拒否を直接示すステージ1の基本サインです。机上の勉強ではなく、日々の生活動作(食事、着替え、遊び)の文脈の中で使用します。
【頻出基本サインの具体例と身体動作】
- 「ちょうだい(ください)」:両手(または片手)の手のひらを上に向け、指先を軽く曲げながら手前に引き寄せる動作。玩具や食べ物を求める場面で即効性を発揮します。
- 「もっと(もう一回)」:胸の前で両手の手指をすぼめ、指先同士を2回トントンと軽く合わせる動作。おやつのおかわりや、ブランコ・くすぐり遊びの継続を伝える必須表現です。
- 「おしまい(終わり)」:両手を胸の前に出し、手のひらを下から上へとクルッと返して外側に払う動作。遊びの切り替えや、食事の終了を明確にし、パニックを予防します。
- 「たべる」:優位手をつぼめて指先を口元に2回近づける動作。スプーンを持つ動作の模倣であり、身体感覚と直結しやすいサインです。
- 「まって(待つ)」:片手の手のひらを相手に向けて垂直に立て、静止させる動作。大人の制止指示を視覚化する際にも重宝します。
サインと並び立つマカトン法のもう一つの柱が、マカトンシンボルの活用です。これは、対象の本質的な特徴を極めて単純な線画で抽出したピクトグラム記号です。市販の複雑なイラストや写真カードと比べ、背景のノイズ情報が一切削ぎ落とされているため、自閉スペクトラム症児特有の「細部へのこだわり(過剰選別)」を防ぎ、概念をストレートに伝える強みがあります。
家庭内では、冷蔵庫に「ジュース」「牛乳」のシンボルカードを貼り、指差しとサインを併用させて意思表示を促すなど、物理環境へのアプローチとして絶大な威力を発揮します。