ヒラメを生食して発症する食中毒の原因を調査すると、大きく2つの異なる寄生虫に行き当たります。ひとつは海産魚全般に寄生する線虫類「アニサキス」、そしてもうひとつがヒラメの筋肉組織に寄生する粘液胞子虫「クドア・セプテンプンクタータ(Kudoa septempunctata)」です。
アニサキスは体長2〜3cmほどの白い糸状の虫で、魚の内臓や身を注意深く観察すれば肉眼で確認できます。胃壁に潜り込むことで激しい痙攣性の胃痛を引き起こすため、発症した患者は「内臓を針で刺されたような激痛」を訴えるのが典型的です。
一方、2011年に厚生労働省によって新たな食中毒原因物質として特定されたクドア・セプテンプンクタータは、大きさが約10マイクロメートル(0.01ミリ)前後しかありません。花びらのような7つの胞子嚢(ほうしのう)を持つ多細胞生物であり、ヒラメの筋肉の筋繊維内に潜り込んでいます。筋肉の見た目や色、食感、味を一切変化させないため、人間の視覚で寄生を発見することは物理的に不可能です。この「目に見えない」という性質こそが、外食産業や鮮魚市場で今なお警戒が続く最大の要因となっています。