メディア論および社会心理学の観点からゴチバトルを解剖すると、この番組は極めて精巧な「感情移入の舞台装置」であることが分かります。行動経済学におけるプロスペクト理論(損失回避バイアス)が示すように、人間は「何かを得る喜び」よりも「持っているものを理不尽に失う苦痛」に対して約2倍強く感情を揺さぶられます。出演者が数十万円を失う瞬間の絶望感や、ピタリ賞で借金が帳消しになる安堵感は、画面を越えて視聴者の脳内に強いドーパミンと共感を呼び起こします。
さらに、芸能界という特権的な世界に身を置くセレブリティたちが、私たち一般人とまったく同じ「お金の価値」「金銭感覚のズレ」を白日のもとに晒されるという構造が、絶妙なカタルシスを生み出しています。普段は完璧に見えるトップタレントが、数千円の計算ミスで狼狽し、頭を抱える姿――そこには昭和から平成、令和へと受け継がれてきた「人間の見栄と弱さの喜劇」が凝縮されているのです。