ネット上で数千万回以上再生されてきた「太平洋と大西洋がぶつかり合い、水が混ざり合わない奇跡の瞬間」と題された動画。くっきりとした境界線を境に、一方は濁った淡い青色、もう一方は深い藍色の海水がせめぎ合う光景は多くの人々を魅了してきました。しかし、海洋調査の現場データと一次記録を照合すると、決定的な事実が浮かび上がります。
結論から言えば、あの有名な動画の多くは太平洋と大西洋の境目ではなく、アラスカ湾の混ざらない海に関するデマや誤認が発端となっています。撮影場所はドレーク海峡ではなく、米国アラスカ湾の沿岸部です。海洋学者の研究調査航海などで撮影された映像が、いつの間にか刺激的なキャプションとともに転載され、「太平洋と大西洋の境界」として世界中に誤認拡散されてしまった経緯があります。
動画に映る海の境界線で色が違う真相は、大洋同士の衝突ではなく、アラスカの氷河から溶け出した淡水と外洋の海水がぶつかる現象です。氷河が山肌を削りながら海へ流れ込む際、粘土大の微細な鉱物粒子(氷河粉/ロックフラワー)を大量に含んだ濁水となります。この泥を含んだ冷たく軽い淡水流が、塩分濃度の高い重い外洋水と接触するエリアで急峻な境界(フロント)を形成し、光の散乱によって視覚的に全く異なる二色を生み出していたのです。