本展がアート界の慣例を打ち破った最大のトピックは、京都市ふるさと納税の返礼品として展覧会入場券と限定トレーディングカードをパッケージ化した試みです。財政難に直面していた京都市と、巨額の制作費を自腹で投じていた村上隆側の利害が一致したこの施策は、受付開始直後から申し込みが殺到し、数億円を超える驚異的な寄付金を京都市にもたらしました。
ふるさと納税限定特典として提供されたカードは、精緻なホログラム仕様や村上作品のアイコニックなモチーフが施されたコレクター垂涎の逸品でした。しかしその希少価値の高さゆえに、フリマアプリやオークションサイトへの即時転売が相次ぎ、定価を遥かに超えるプレミア価格で取引される現象が常態化しました。
この事態に対し、文化経済学者や美術評論家の間では激しい議論が交わされました。自治体の財源確保と文化事業の持続可能性を両立させた「革新的なファンドレイジング」として絶賛される一方、「公立美術館が特定商品の射幸心を煽り、投機マネーの温床を作ってよいのか」という倫理的懸念も浮き彫りになりました。しかし、公的助成金だけに頼らない自立型の大型個展運営モデルを提示した功績は、日本の文化行政に極めて重い一石を投じました。