死刑確定者が最も恐れ、同時に拘置所が最も警戒する瞬間が「その時」です。日本における死刑執行告知のタイミングは、執行当日の午前8時から9時頃と定められています。前日告知を行うとパニックや自殺の危険性が極めて高くなるという保安上の理由から、事前の予告は一切なされません。
朝食が終わり、静まり返ったフロアに複数の刑務官の足音が響く。自分の房の前で鍵が開けられた瞬間、確定者は自らの命の終わりを悟ります。
死刑執行当日の流れは、分刻みで冷徹に進行します。
1. 呼出しと告知:独房から連れ出され、所長または幹部から法務大臣の死刑執行命令が口頭で言い渡される。
2. 身辺整理と教誨:教誨室に通され、希望する宗派(仏教・キリスト教など)の教誨師と最後の対話を行う。遺言の確認、最後の飲食(お茶、果物、銘菓など)が許される。
3. 刑場への移動:白装束に着替え、目隠しと手錠を施された状態で刑場(執行室)へと導かれる。
4. 執行台の踏板:床の赤い枠線(踏板)の上に立たされ、首にロープ(絞首索)が掛けられる。
5. ボタン押下:隣接する別室に設置された3〜5個の押しボタンを、複数の刑務官が一斉に押す。どのボタンで踏板が開いたか分からない心理的配慮が取られている。
6. 絶命確認:地下室へと体が落下し、心停止を医師が確認。その後、一定時間放置されたのちに遺体が降ろされる。
朝の告知から執行完了までは、わずか数時間足らずです。このあまりに急激なプロセスの是非については、近年弁護士会などを中心に人権上の観点から強い議論が巻き起こっています。