日本の七夕シーズンで毎年話題に上るのが「雨が降ったら二人は会えないのか?」という問題です。7月7日に降る雨には天の川七夕雨催涙雨(さいるいう、または翠涙雨)という風情ある別名がついています。
この雨の意味づけには、東アジア各地の伝承で興味深い解釈の分岐が見られます。
日本で一般的に流布している説では、「雨が降ると天の川の水かさが増して濁流となり、川を渡れなくなった二人が流す悲しみの涙」と解釈されます。一方で、中国や韓国の一部の地域伝承では、「無事に一年ぶりの再会を果たし、喜びのあまり流したうれし涙」や「翌朝の別れを惜しんで流す涙」とも伝えられています。
また、川を渡れない二人を救う存在として登場するのが織姫彦星カササギの橋の伝説です。どこからともなく飛来した無数のカササギ(鳥)が、天の川の上で羽を広げて互いに連なり、一枚の巨大な吊り橋(鵲の橋=かささぎのはし)を形成します。二人はその鳥の背を踏み渡ることで、濁流を越えて逢瀬を果たすことができるとされています。小倉百人一首にも「かささぎの 渡せる橋に おく霜の…」(中納言家持)と詠まれている通り、この伝承は平安時代の日本文化にも深く根付いています。