医療取材班が総合診療科やペインクリニックの現場を取材すると、芍薬甘草湯に過剰な依存を寄せる患者の生々しい実態が浮かび上がってきます。都内のクリニックに通院する60代女性は、かつての手記で次のように振り返っています。
「毎晩のように足がつり、睡眠不足からノイローゼ寸前でした。病院でツムラ68番をもらって飲んだ瞬間、嘘のように痛みが引いて救われた思いがしたんです。それ以来、『今夜もつるかもしれない』という恐怖心から、発作が起きていない日も予防として毎晩欠かさず飲むようになってしまいました。半年後、血圧が200近くまで跳ね上がり、足がパンパンに腫れて歩けなくなって初めて、医師から偽アルドステロン症だと宣告されたのです」
患者が「痛みの恐怖」から逃れるために薬を手放せなくなる心理的執着は、医療現場でも深刻な課題として受け止められています。一方で、SNSや知恵袋の投稿を分析すると、「登山の携行品として必携している」「フルマラソンの30km地点で足が攣りかけた時に飲んで完走できた」といった、本来の目的である限定的な頓服使用で絶大な恩恵を受けているユーザーが多数を占めます。つまり、この薬は「発作時のレスキュー」として使うか、「予防薬として常用」してしまうかによって、劇薬にも毒薬にも豹変するというのが現場の実態です。