「うどんと蕎麦はどっちが太る?」という長年の疑問に迫る際、大半の人が最初に行うのが単純な熱量の比較です。文部科学省の「日本食品標準成分表」や食品メーカーの公開データを精査すると、驚くべき事実が浮かび上がります。茹で上がった状態の麺100gあたりで比較した場合、うどんのエネルギーは約95〜105kcal、糖質量は約20.8g〜21.6gであるのに対し、蕎麦は約130〜140kcal、糖質量は約23.1g〜26.0gに達します。つまり、100g単位の純粋なうどん蕎麦糖質量およびカロリーにおいて、蕎麦はうどんの数値を上回っているのです。
それにもかかわらず、なぜ世間では「うどんの方が太る」と断じられるのでしょうか。その最大の論拠となるのが、食後血糖値の上昇度合いを示すGI値(グリセミック・インデックス)です。食品医学の検証データにおいて、白米や精製小麦を主原料とするうどんのGI値は80〜85前後の高GIに分類されるのに対し、蕎麦は50〜55前後の低GIに留まります。高GI食品を摂取すると血液中に急激にブドウ糖が溢れ出し、すい臓から大量のインスリンが分泌されます。インスリンは血中の糖を細胞へ送り込む過程で、余剰分を中性脂肪へと強烈に変換蓄積させる作用を持つため、血糖値スパイク予防の観点において高GIなうどんは太りやすいリスクを背負っていることになります。
さらに見逃せないのが「1食としての標準的な提供量」の差異です。出雲そばの老舗・本田屋や健康管理プラットフォームを運営するシンクヘルス株式会社の公開情報によると、市販のゆで麺1玉の規格は、うどんが概ね200g〜250g(約210〜260kcal)であるのに対し、蕎麦の1玉は150g〜170g(約200〜230kcal)と小ぶりに設定されているケースが目立ちます。100g単体で見れば蕎麦の方が高密度であるものの、1杯の丼として胃に収める総質量を考慮したとき、両者の摂取エネルギー差は僅差へと縮まります。数字の表面的な高低だけに囚われると、身体内部で起きる代謝の真実を見誤ることになります。