2022年3月5日午後、栃木県那須町湯本の国指定名勝「殺生石」を訪れた観光客が、注連縄が巻かれていた巨石が中央から完全に二つに割れているのを発見した。目撃者の投稿はまたたく間に拡散され、「九尾の狐の封印が解かれた」「不吉な予兆ではないか」と国内外でトレンド入りを果たした。
この怪異に対し、那須町教育委員会や地質学の専門家による詳細な現地調査が実施された。調査の結果導き出された那須殺生石が割れた真相は、オカルト的な呪いではなく、極めて明快な自然現象であった。殺生石は安山岩で構成されており、数年前から自然のひび割れ(クラック)が存在していた。その亀裂内部に雨水や雪解け水が浸透し、真冬の寒暖差によって凍結と融解を繰り返す中で「凍結破砕作用」が進行。さらに岩石内部に長年浸透した高濃度の硫化水素ガスによる化学的風化が脆化を加速させ、岩の自重に耐えきれなくなって自然破断に至ったと結論づけられている。
その後、2022年3月26日には那須温泉神社によって「慰霊祭ならびに平和祈願祭」が執り行われ、神職による鎮魂の儀式が実施された。割れた石を修復して接着するか否かについて地元自治体や文化財保護審議会で議論が重ねられたが、「破断した姿そのものが自然の営みであり、石が割れたという事実もまた新たな歴史の1ページである」との判断から、修復は行わず現状のまま保存される方針が決定した。
殺生石現在の状況としては、割れた岩の周囲に安全確保のための木製柵が再整備され、2026年の今も観光客が間近に見学できる状態が保たれている。現地管理事務所の計測データによると、噴出する火山性ガス濃度のモニタリング体制が強化されており、風のない日やガス滞留時には進入禁止のアラートが鳴る安全策が敷かれている。怪異を恐れる声は落ち着きを見せ、むしろ「割れた殺生石を一目見よう」と訪れるインバウンド観光客や伝承ファンで賑わう名所として定着している。