大手キャリアショップの店頭窓口を取材すると、契約変更や新機種購入の翌週に「電源の切り方が分からなくなった」と再来店する高齢者やライトユーザーが毎週のように訪れている現場の実態が浮き彫りになります。スタッフの一人は「シニア層だけでなく、5〜6年ぶりに最新端末へ買い替えた現役世代のビジネスパーソンからも、電源長押しでAIがしゃべり出して焦ったという相談が日常茶飯事です」と証言します。
SNSや大手知恵袋などのコミュニティを定点観測しても、「機内持ち込みで電源を切りたいのに切れず、パニックになった」「映画館の上映直前に電源が切れず冷や汗をかいた」という切迫した投稿が散見されます。人間工学において、機器の外観から使い方を直感させる視覚的・物理的手がかりを「アフォーダンス」と呼びますが、側面の独立したボタンを押しても意図したシャットダウンが行われない現状は、デジタルデバイドを加速させる構造的摩擦を生んでいると観察できます。
技術の高度化とAIの普及を優先するあまり、最も基本的なライフライン操作である「電源を切る」というUIが後景に追いやられた結果、現場のユーザー体験には明らかな歪みが生じています。