資料館を訪れた世代の間で最も議論を呼んだのが、皮膚が焼けただれ、両手を前に突き出して彷徨う姿を再現した「被爆再現人形(プラスチック製ジオラマ)」の撤去です。かつては資料館の代名詞ともいえる展示でしたが、2017年4月に惜しまれつつも姿を消しました。
なぜなくなったのか――その理由は決して「怖すぎるからクレームが入った」という単純なものではありません。広島市と資料館が打ち出した理由は、「実物資料(遺品や写真)が持つ圧倒的な力と真実性を伝えるため」でした。作り物の人形では実際の被害の惨状を完全に再現することはできず、時が経つにつれて風化や解釈のズレが生じる懸念があったのです。被爆者の生きた証である「本物の遺品」に語らせるという原点回帰の決断でした。