くら寿司が直面した危機は、客による迷惑動画だけではありませんでした。2022年に神奈川県内の店舗駐車場で店長が焼身自死を遂げた痛ましい事件と、それに続く遺族からの損害賠償請求訴訟は、同社の組織運営に重い影を落としました。
遺族側は、上司であるスーパーバイザーからの執拗な叱責や時間外労働の常態化など、過度な心理的負荷が自死の原因であるとして提訴。法廷闘争は長期化の様相を呈していましたが、関係者の証言によると、双方が納得する条件面での合意が図られ、裁判上の和解が成立しています。
この司法判断と社会的指弾を受け、同社は労務管理体制を根本から刷新しました。スーパーバイザーの権限分散、第三者通報窓口の外部委託化、さらには店舗スタッフの勤怠状況を本部がリアルタイムで一元監視する労務DXシステムの稼働など、現場に過度な重圧がかからない仕組み作りが進められました。華やかな業績回復の裏で、尊い命が失われた教訓を決して風化させてはならないという痛切な反省が、現在の健全な職場環境づくりへと繋がっています。