ビジネスマナーにおいて最も失敗が多発するのが、上司や取引先といった目上の関係者に対する使い方です。結論から言うと、相手の動作として「お気を揉まないでください」「課長もお気を揉まれたことと存じます」といった表現を使うのは重大なマナー違反となります。
理由は2点あります。第1に、「気を揉む」には「イライラして落ち着きを失う」という感情的な動揺が含まれるため、目上の人に対して「あなたは動揺してやきもきしている」と決めつける無礼な響きが生じる点。第2に、「揉む」という動詞は本来自分の内面で行う動作であり、接頭辞「お」を付けた「お気を揉む」という形自体が日本語として極めて不自然な敬語形成である点です。
相手に心配をかけてしまった状況、いわゆる「気を揉ませる」事態を詫びる場合や、相手の心中を思いやる際は、以下のような格式あるビジネス敬語への言い換えが必須となります。
- NG例:「進捗が遅れてしまい、部長にお気を揉ませて申し訳ありません。」
👉 正しい言い換え:「進捗のご報告が遅れ、多大なご心配とご懸念をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。」 - NG例:「先方の返答待ちですので、どうぞ気を揉まないでください。」
👉 正しい言い換え:「先方からの回答があり次第速やかに共有いたしますので、今しばらくご安心の上でお待ちいただけますと幸いです。」 - 自身の状態をへりくだって伝える場合:「結果が出るまで私どもも大変気を揉んでおりましたが、無事に着地でき安堵いたしました。」(※身内の心情を吐露する文脈であれば口頭表現として許容されます)