ドラムメジャーの存在が一般層にまで広く知れ渡るきっかけとなった象徴的な存在が、全米ローズパレードへの複数回出場を果たし、「オレンジの悪魔」の愛称で世界的な熱狂を生んでいる京都橘高校吹奏楽部です。激しいステップを踏みながら超絶技巧の演奏をこなす同校において、先頭で笑顔を絶やさずに隊列を導くドラムメジャーの姿は、国内外のメディアで幾度となく特集されてきました。
当時の密着ドキュメンタリー番組やOGたちの手記、歴代ドラムメジャーの証言を紐解くと、その舞台裏には想像を絶する重圧が存在します。ある歴代ドラムメジャーは過去の特番インタビューにおいて、次のように胸中を吐露しています。
「100人を超える部員が自分の背中だけを信じて全力で走ったり踊ったりしている。もし自分が1テンポでも狂ったら、後ろの全員が衝突して転倒するかもしれないという恐怖と毎日本気で戦っていた」
京都橘高校をはじめとする全国屈指の強豪校では、パレードの本番中、ドラムメジャーは満面の笑顔を浮かべながらも、心拍数はトップアスリートの全力疾走レベルに達しています。後方のフォーメーションの乱れを背中の気配やシューズの足音だけで察知し、曲の繋ぎ目では寸分の狂いもなくホイッスルを鳴らさなければなりません。SNSや動画配信サイトのコメント欄には「笑顔が可愛い」「華やか」という感想が溢れますが、現場の過酷さを知る吹奏楽経験者たちからは「あの笑顔の裏にあるメンタルの強靱さは尋常ではない」と、畏怖の念を込めた声が寄せられています。