日本のポピュラー音楽史を語る上で、岡山県出身の歌手・ミュージシャンの存在を避けて通ることはできません。世代やジャンルを超え、独自の音楽的文脈を築き上げた巨星たちがこの地から旅立っています。
世界的なストリーミングヒットを記録し、国内外のスタジアムを満員にし続けるシンガーソングライター藤井風は、岡山県南西部に位置する浅口郡里庄町の出身です。実家の喫茶店で幼少期から多様な音楽に触れ、YouTubeへのピアノ演奏動画投稿からキャリアを切り拓いた彼の楽曲には、岡山弁のフレーズが自然な語感として溶け込んでいます。楽曲「何なんw」や「もうええわ」に代表されるように、方言特有の響きを洗練されたR&Bやジャズのコード進行に昇華させた手法は、現代J-POPにおける一大イノベーションと評されています。
ロック界に目を向ければ、津山市出身の稲葉浩志(B'z)が金字塔として君臨しています。実家である「イナバ化粧品店」は全国のファンが訪れる聖地として知られ、津山市民栄誉賞を受賞した際の凱旋公演は地域全体を熱狂の渦に巻き込みました。さらにパンクロックの象徴として半世紀近くシーンを牽引する甲本ヒロト(THE BLUE HEARTS、THE HIGH-LOWS、ザ・クロマニヨンズ)は岡山市の出身です。剥き出しの言葉と普遍的なメロディで若者の魂を揺さぶり続ける彼のルーツもまた、岡山の地にあります。