ソーシャルメディアや知恵袋などのコミュニティを分析すると、住民の多くが直面しているのは「行政側の都合で組織が分かれていることへの苛立ち」です。「子どもが熱を出して発疹が出た際、どこに相談すればいいか迷って保健センターに電話したら保健所を紹介され、保健所に電話したら小児科へ行くよう促された」「飲食店の開業相談で市役所内の健康窓口に行ったら、隣町の県立保健所まで行くよう案内された」といった体験談が散見されます。
こうした混乱の背景には、両施設における保健師 業務内容の違いが深く関係しています。同じ「保健師」という国家資格者であっても、所属する組織によってそのミッションは大きく異なります。
保健センターに所属する保健師は、主に「地区担当制」などを敷き、担当地域の家庭を個別訪問します。未熟児の訪問指導や虐待リスクのある家庭の見守り、特定保健指導の面接など、住民の生活空間に直接入り込み、伴走型の支援を展開するのが日常業務です。
一方、保健所に所属する保健師は、より広域的・統括的な役割を担います。管内市町村の保健師に対する技術指導、難病患者の支援ネットワーク構築、感染症発生時のクラスター班立ち上げや濃厚接触者の追跡など、システム全体の統括マネジメントが主業務となります。したがって、個人の健康相談に手取り足取り対応する体制は保健センターほど手厚く確保されていないのが現場の実情です。
また、政令指定都市や東京23区では「〇〇区保健福祉センター」といった名称で、同じ総合庁舎の同一フロア内に保健所機能と保健センター機能が併設されているケースが多々あります。この「外見上の一体化」が、一般市民にとって両者の職能の境界をさらに見えにくくさせている一因といえます。