咳をしたときに胸のあたりが痛むと「肺そのものが傷ついているのではないか」と恐れを抱きがちです。しかし解剖学上、肺の実質組織には知覚神経(痛覚)が存在しません。そのため、肺胞が破壊されたり炎症を起こしたりしても、肺そのものがダイレクトに痛みを発信することはありません。
では、なぜ「肺が痛い」と感じるのでしょうか。その痛みの出どころは主に3つに大別されます。1つ目は肺の表面を覆う「胸膜(肋膜)」、2つ目は肋骨の間にある筋肉(肋間筋)や胸筋、3つ目は肋骨に沿って走る「肋間神経」です。咳をする瞬間は胸腔内に強い圧力がかかり、これらの組織が急激に伸縮したり擦れ合ったりすることで鋭い痛みが知覚されます。痛みの性質や付随する症状を丁寧に観察することが、背後にある病気を見極める第一歩となります。