褥瘡ケアの領域では、過去の古い常識や誤ったセルフケアが今なお散見されます。代表的な3つの誤解を正しく是正しておく必要があります。
誤解1:発赤を見つけたら血行を良くするために強くマッサージする
これは極めて危険な行為です。圧迫によって生じた発赤部位は、皮下の微小血管が破綻し組織損傷が始まっている状態です。そこをマッサージして物理的摩擦を加えると、組織崩壊を決定的に加速させ、浅い発赤を一気に皮下血腫や潰瘍へと悪化させてしまいます。発赤部位は「触れずに圧を抜く(除圧と保護)」が鉄則です。
誤解2:除圧のためにドーナツ型の円座クッションを使う
かつて多用されたゴム製やウレタン製の円座クッションは、現在のガイドラインでは使用が明確に推奨されていません。中央の穴に骨突出部を逃がすように見えますが、実際にはリングの縁に過剰な圧力が集中し、中心部の静脈還流を遮断して局所うっ血と虚血を助長します。局所除圧には、広い面積で荷重を分散するウレタンクッションやピローを使用し、接触圧を32mmHg以下に抑えるポジショニングを行うのが正解です。
誤解3:傷口は乾燥させてカサブタを作るのが最も早く治る
昔ながらの「ガーゼを当てて乾かす」方法は、創部からの滲出液に含まれる細胞成長因子(グロースファクター)を奪い、組織再生を遅らせます。感染兆候がない限り、モイストヒーリング(湿潤環境の維持)を保つドレッシング管理が国際的な標準治療です。
【プロの結論】褥瘡対策チームを機能させる実践的判断基準と役割分担
褥瘡の看護計画を成功させる組織づくりの基準として、どのような介入を推進し、どのような運用を慎重に見直すべきかの判断基準を整理しました。
【推進すべきケア・組織行動】
・皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCN)を中心とした褥瘡ラウンドの定期実施と、DESIGN-R®スコアに基づいた週1回の計画評価
・リハビリテーション科と連携した離床姿勢のシーティング調整(車椅子乗車時の仙骨座り防止)
・管理栄養士とのリアルタイムな食事摂取量・血液データの共有と栄養補助食品の早期導入
【慎重になるべき(避けるべき)運用】
・患者の個別性を無視した「全員一律の固定時間体位変換」
・創部の変化を記録せず、前日と同じ処置・計画を漫然とルーチン継続すること
・失禁患者に対する過度な石鹸洗浄やゴシゴシ拭きによる角層バリアの破壊