彼の手土産は、仏教の教理だけにとどまらなかった。彼とともに来日した楽師や僧侶たちの手によって、東南アジアやインドの伝統音楽・舞踊である「林邑楽(りんゆうがく)」が平城京へと持ち込まれた。これらは瞬く間に当時の貴族社会を魅了し、現在の皇室雅楽の源流へと組み込まれていく。
正倉院に保管されているペルシャ製ガラス器やインド由来の楽器群。それらが単なる貿易品ではなく、生きた人間たちの交流と熱量によって運ばれてきたという事実を、今回の新資料は強力に裏付けている。平城京の風は、私たちが教科書で習う以上に国際的で、刺激的だった。