親権を持った辻仁成さんと十斗さんの二人三脚の生活は、決して平坦なものばかりではありませんでした。慣れない家事や子育てに奔走する辻さんが、息子との対話の糸口として何よりも大切にしたのが日々の手料理でした。
辻さんの公式ブログやSNSで長年紹介されてきた料理の数々は、読者の間でも大きな反響を呼びました。日本の家庭料理から本格的なフレンチの技法を取り入れた一皿まで、彩り豊かな食卓は、思春期を迎えた多感な息子への無言の愛情表現そのものでした。十斗さんも次第に料理に関心を持ち、父の留守中に自らキッチンに立つほどに腕を上げたというエピソードも明かされています。
高校卒業後、十斗さんはフランス国内の大学へ進学。学業に励む傍ら、10代後半からは自立に向けた生活をスタートさせました。父親の庇護を離れ、一人の青年として自分の力で歩む道を選んだ十斗さんの背中を、辻仁成さんも温かく見守り続けています。