小田急線の新松田駅に降り立ち、JR御殿場線の松田駅へ向かおうとする利用者の多くが足止めを食らう背景には、駅名の一致しない独立した2つの駅舎構造と、鉄道会社間のシステム境界という2つの決定的な障壁が存在します。現地調査で明らかになった「乗り換えトラップ」の構造を解剖します。
第一の要因は物理的な動線です。小田急線新松田駅の北口改札を出ると、正面にロータリーが広がり、右手前方にJR松田駅の南口駅舎が視界に入ります。直線距離にしてわずか約50メートル(徒歩約1〜2分)という至近距離に位置しているものの、連絡通路や地下道といった屋根付きの直結構造はありません。雨天時には一度傘を開いて一般道を横断する必要があり、駅前ロータリーの構造を把握していない初見の旅行者は、どちらの方角へ進めばよいか視界を奪われやすい構造になっています。
さらに問題を複雑にしているのが、交通系ICカードのエリア境界問題です。小田急電鉄はPASMO(首都圏Suica)エリアですが、JR御殿場線はJR東海のTOICAエリアに属します。首都圏エリアから交通系ICカード1枚でそのまま入場して御殿場線に乗り換えようとすると、両社のエリアを跨ぐ自動改札機の通過判定で弾かれ、改札窓口での有人精算待ちによる大行列に巻き込まれるケースが頻発しています。現地取材時にも、駅窓口で精算処理に追われる乗客の姿が複数確認されました。新松田駅と松田駅の乗り換えを行う際は、事前に全区間の紙の乗車券を購入しておくことが、スムーズな移動を実現する最大の防衛策です。