和彫りの最高峰とされるのが、背中一面(亀の甲・額彫り)に大日如来を堂々と据えた巨大な構図です。広大な背中というキャンバスを使うことで、仏の繊細な指先の表情や装飾品、光背の広がりを余すところなく緻密に描写できます。
さらに玄人好みの構図として知られるのが、「大日如来と不動明王」の組み合わせです。一見すると対照的な両者ですが、密教の教義において不動明王は大日如来の「教令輪身(きょうりょうりんしん)」、すなわち如来の命を受けて悪を調伏するために怒りの姿をとった化身そのものです。
背中の中央に静かな笑みを湛える大日如来を配し、その足元や対角に憤怒の形相で炎を背負う不動明王を配置する構図は、「絶対的な慈悲(静)」と「悪を断ち切る剛力(動)」の完璧な調和を意味します。自身の精神的支柱としてこれ以上ない強度を持つデザインと言えます。