酒席で長年語り継がれている最大の俗説が、「日本酒を飲むと太るが、焼酎ならいくら飲んでも太らない」という説です。この都市伝説の真偽を栄養生理学の観点から検証します。
まず事実として、焼酎の糖質は0gです。蒸留工程で原料のデンプンや糖分がすべてカットされるため、血糖値の急上昇を直接引き起こすことはありません。一方で、日本酒1合(180ml)には角砂糖約2個分に相当する約6.5〜8.0gの糖質が含まれています。この点だけを切り取れば、「日本酒=太る」という言説は一見正しく映ります。
しかし、カロリー代謝のメカニズムを紐解くと、別の真実が浮き彫りになります。アルコール自体が持つエネルギーは1gあたり約7.1kcalと高カロリーです。この熱量は「エンプティカロリー」と呼ばれ、身体に蓄積されない代わりに体内へ入ると最優先で熱として代謝・消費されます。その結果、同時に食べた食事やおつまみの脂質・糖質の分解がストップし、それらが体脂肪として蓄積されやすくなるのです。
つまり、「焼酎だから太らない」と過信して揚げ物や高脂質のおつまみを暴食すれば、焼酎であっても確実に太ります。逆に、日本酒を1合嗜む程度であれば、糖質量はおにぎり数口分(糖質換算で約1/5)に過ぎず、肥満の直接原因とはなり得ません。日本酒が太るとされた真の理由は、日本酒特有のアミノ酸や有機酸が胃液の分泌を活発にし、「食欲を強く刺激しておつまみを食べ過ぎてしまうこと」にあります。