現場で最も多く見られるさせていただく誤用例が、店舗や企業の告知文で見かける「本日休業させていただきます」や「明日より値上げさせていただきます」です。休業や値上げは自社が決める意思決定であり、顧客に許可を求めているわけではありません。恩恵も相手側ではなく自社にあるため、本来は「休業いたします」「値上げいたします」とするのが自然です。許可を出していない客側からすると、「休むことを勝手に許可された形にされている」という不条理な感覚を無意識に抱くことになります。
さらに深刻なのが、二重敬語の落とし穴です。同じ種類の敬語を重ねて使うことで、かえって品格を損ねる現象を指します。代表的なミスが、以下のような組み合わせです。
- 拝見させていただきます:「拝見する(謙譲語)」+「いただく(謙譲語)」の二重敬語。「拝見いたします」または「拝見します」が正解。
- ご案内させていただきます:「ご〜する(謙譲語)」+「いただく(謙譲語)」の重複。「ご案内いたします」が端正。
- お伺いさせていただきます:「伺う(謙譲語)」+「いただく(謙譲語)」の重複。「お伺いいたします」または「伺います」がスマート。
また、させていただきます失礼にあたるケースとして見落とせないのが、相手の選択肢を奪う一方的な通告です。「来週月曜日に訪問させていただきます」とアポイントの合意前に言い切ってしまうと、相手は「許可していないのに決定事項として押し通された」と反発を覚えます。この場合は「ご都合がよろしければ、お伺いしたく存じます」と相手の意思を尊重する形を取るのがさせていただく敬語マナーの鉄則です。