臨床現場において特に深刻視されているのが、精神疾患の悪化と、禅や瞑想の歴史の中で「魔境(まきょう)」と呼ばれてきた変性意識状態のトラブルです。
精神疾患を抱えている場合、マインドフルネスの副作用として「解離症状」が引き起こされることがあります。自分の身体から意識が抜け落ちたような離人感、目の前の現実が作り物のように思える現実感喪失が代表例です。自己を見つめ続ける過程で自我の境界線が揺らぎ、強烈な虚無感や恐怖体験に呑み込まれてしまう現象です。
禅宗などで古くから警告されてきた「魔境」は、脳科学の視点から見れば、極限の集中や感覚遮断によって生じる一時的な知覚異常・幻覚・妄想的思考に他なりません。指導者のいない独学の瞑想でこの状態に陥ると、「自分がおかしくなってしまったのではないか」という激しい恐怖に囚われ、うつ病やパニック障害をさらに根深く悪化させる引き金になります。