インターネット上の掲示板やSNSでは、糖尿病に伴う皮膚症状に関して医学的に重大なリスクを孕んだ誤解が蔓延しています。最も典型的な盲点は、「皮膚の痒みや湿疹は、薬局でステロイド軟膏を買って塗れば治る」という短絡的な自己治療です。
一般的なアトピー性皮膚炎や接触皮膚炎であればステロイド外用薬は劇的な効果を発揮しますが、高血糖を背景にした皮膚トラブルに対して安易に使用すると事態は一変します。高血糖環境下では好中球の遊走能や貪食能が低下しており、皮膚表面の免疫力が著しく落ちています。そこへ免疫抑制作用を持つステロイドを塗り続けると、真菌(カビ)や細菌の爆発的な増殖を許してしまうのです。
糖尿病における足の湿疹症例を精査すると、単なる湿疹ではなく、白癬菌が角層深く侵入した難治性足白癬(水虫)や、カンジダ症が混発している事例が頻繁に見られます。真菌感染に対してステロイドを使用すると「白癬性肉芽腫」など重篤な病態へと悪化し、角質がボロボロに崩壊して二次的な細菌感染(蜂窩織炎)を併発します。神経障害によって足の痛みを感知できない患者の場合、気付いた時には深部組織まで壊死が進行し、下肢切断を迫られるという悪夢のようなシナリオも決して誇張ではありません。
また、「皮膚の黒ずみは加齢や日焼けのせい」という思い込みも危険です。糖尿病で皮膚が黒ずむ理由には、先述した黒色表皮腫のほか、終末糖化産物(AGEs)の蓄積が関与しています。余分な糖が皮膚のコラーゲン線維と結合して変性・黄褐色化すると同時に、皮膚の代謝ターンオーバーが停滞します。美白化粧品やピーリングをいくら施しても、血液中のグルコース濃度を是正しない限り、皮膚の深部から生じる黒ずみが改善することはありません。