ニンニクに関する情報の中には、科学的根拠を欠いた危険な誤解が少なくありません。その代表格が「ニンニクは熱を通せば無害化するから、どれだけ食べても大丈夫」という言説です。
確かにニンニク加熱効果によって、熱に弱い酵素アリイナーゼが失活し、アリシンの生成は大幅に抑制されます。アリシン自体も熱分解を受け、「アホエン」や「ジアリルジスルフィド」といった別の有機硫黄化合物へと姿を変えます。これにより胃粘膜への直接的な攻撃性は劇的に低下します。
しかし、加熱したからといって「過剰摂取のリスクがゼロになる」わけではありません。変換された硫黄化合物であっても、大量に消化管に入れば腸内フローラを刺激し、異常発酵や腹部膨満感、硫黄臭の強いガス(おなら)の多発を引き起こします。さらに、ニンニクのオイル焼きやアヒージョのように大量の植物油と一緒に加熱調理された場合、高濃度の脂質とニンニク成分のダブルパンチによって消化不良性の下痢が引き起こされるケースが極めて多いのです。「火を通したから安心」と油断して丸ごと何玉も平らげる行為は、翌日の激しい腹痛を約束するようなものです。
また、「黒ニンニクは発酵食品だから副作用がない」という認識も盲点を含んでいます。黒ニンニクは生ニンニク特有の刺激こそ極めて低いものの、熟成によってフルクトースなどの糖質濃度が凝縮されています。一度に大量摂取すると腸管内の浸透圧が急激に上がり、体質によってはお腹が緩くなって激しい軟便を招く要因となります。