これほどの好立地にありながら、ホテルニュー鳴門はなぜ歴史の表舞台から姿を消したのでしょうか。閉館理由の核心は、交通ネットワークの劇的な進化と観光スタイルの構造転換にありました。
最大の転機となったのは、1998年(平成10年)の明石海峡大橋の開通です。本州と四国が高速道路で直結されたことは巨大な経済効果をもたらした反面、鳴門エリアの観光形態を根本から変容させました。京阪神からの所要時間が大幅に短縮された結果、鳴門は「宿泊する滞在型観光地」から「半日で回れる日帰り型・通過型観光地」へと急激にシフトしたのです。
これに加え、1996年に鳴門スカイラインが有料道路から無料化されたことでドライブコース自体の希少性が薄れ、沿線のドライブインや休憩施設への立ち寄り客が減少。さらに海風を直接受け続ける断崖絶壁の建築物ゆえに、塩害によるコンクリートの劣化や鉄骨の腐食スピードが凄まじく、維持修繕コストは年を追うごとに経営へ重くのしかかりました。宿泊客の激減と老朽化に伴う改修費用の増大という二重苦に耐えきれず、同館は2000年代初頭に営業終了を余儀なくされたのです。