精神医学の診断基準(DSM-5)において、ミュンヒハウゼン症候群は「虚偽性障害(Factitious Disorder)」に分類されます。経済的利益や兵役免除などの明白な外的報酬を目的とする「詐病(さびょう)」とは異なり、「病人や被害者の役割を演じることで周囲の関心や同情、医療者の配慮を得ること」そのものが主たる目的となる点が最大の特徴です。
混同されやすい「代理ミュンヒハウゼン症候群(Munchausen Syndrome by Proxy: MSbP)」は、母親などの養育者が子どもや要介護者に意図的に病気や怪我を負わせ、「献身的に看病する素晴らしい保護者」としての評価や同情を外部から集めようとする重篤な児童虐待・ネグレクト行為を指します。
臨床現場で用いられる主な鑑別ポイントとセルフチェックの特徴は以下の通りです。
- ミュンヒハウゼン症候群の特徴:原因不明の身体症状を繰り返し訴える/病歴に医学的な不整合が多い/過剰な手術や過酷な検査を積極的に希望する/医師から疑われると別の病院へ転院を繰り返す(ドクターショッピング)。
- 代理ミュンヒハウゼン症候群の特徴:保護者が付き添っている時のみ子どもの容態が悪化する/保護者が医療知識に異常に精通しており医療従事者と親密になろうとする/子どもの苦痛に対して不自然なほど冷静で、周囲からの称賛を喜ぶ。