「プチッと音がして油が出ると気持ちいい」「動画サイトで見かけた綿棒での出し方を真似してみたい」——SNSや動画プラットフォームには、専用と謳うピンセットや綿棒を使ってマイボーム腺の油を押し出すコンテンツが散見されます。しかし、「マイボーム腺を自分で押し出す行為は絶対に安全とは言えない」というのが眼科学会の共通見解です。
マイボーム腺は、上まぶたに約30本、下まぶたに約20本存在する極めて繊細な皮脂腺です。先端の開口部はわずか直径0.1ミリ前後しかありません。肉眼やスマートフォンの拡大鏡程度では正確な位置を捉えきれず、市販のマイボーム腺押し出し器具やピンセットでまぶたを強く挟み込むと、脆弱な腺組織そのものを圧挫(あつざ)して壊死させてしまいます。一度破壊されたマイボーム腺は再生しないケースが多く、生涯にわたって油分分泌が途絶える後遺症を残しかねません。
さらに恐ろしいのが、器具やまぶたの縁が直接眼球に触れて生じる角膜損傷です。角膜表面の上皮が剥がれた隙間から常在菌が侵入すると、難治性の角膜潰瘍へと進行し、最悪の場合は大幅な視力低下を招きます。「今すぐ詰まりを取りたい」という一瞬の衝動が、取り返しのつかない眼病を引き起こす現実に直面しなければなりません。