朝もやが立ち込めるハウスの中で、静かにバラと向き合う男がいる。代表を務める井上重由氏だ。彼の指先は、微妙な葉の傾きや土の湿り気から、植物が発する微小なサインを即座に読み取る。効率第一の大規模生産とは異なり、一株一株の個性に合わせた緻密な水やりと土壌づくり。これこそが、他では決して真似できない圧倒的な花持ちと、力強い発色を生み出す源泉となっている。
「バラは嘘をつきません。人間がどれだけ真剣に向き合ったかが、そのまま花弁の枚数や香りの深さに表れます」と井上重由氏は語る。ハウス内では最新の環境制御技術を取り入れつつも、最終的な判断は長年の経験と直感に委ねられる。特に市場には滅多に出回らない希少品種の育成には並々ならぬ情熱が注がれており、その咲き姿の美しさはひとつの芸術作品を思わせるほどだ。