ネット上のQ&Aサイトや一部の掲示板では、「算定基礎届の数千円の差額くらいなら年金事務所には気づかれない」「間違えて出しても翌年に帳尻を合わせれば問題ない」といった根拠のない俗説が散見されます。しかし、これは実務上きわめて危険な認識です。
日本年金機構では、約4年に一度の周期で事業所に対する「総合調査(定時決定・資格取得等の実地調査)」を実施しています。調査時には賃金台帳、タイムカード、源泉徴収簿の原本が突き合わされ、過去2年間に遡って報酬の過不足が徹底的に洗い出されます。虚偽や重大な過失が認められた場合、過去に遡って社会保険料の差額が一括追徴されるだけでなく、従業員の将来の年金受給額に直接的な不利益を与え、深刻な労使間トラブルや損害賠償問題に発展するリスクを孕んでいます。
提出後に記入ミスに気づいた場合の訂正方法
もし提出期限前後に計算漏れや転記ミスが発覚した場合でも、適切な手順を踏めばペナルティなく是正が可能です。
① 年金事務所から確認通知が届く前(7月中旬〜下旬頃):
速やかに「再提出」の手続きを行います。紙申請の場合は、算定基礎届の用紙上部に赤字で「訂正」または「再提出」と大書し、正しい数値を記入した届出書を作成します。備考欄には「〇月〇日提出分の訂正」と明記し、可能であれば正誤対照表を添付して提出します。
② 標準報酬決定通知書が届いた後(8月以降):
既に年金事務所側でデータ処理が完了しているため、単なる再提出では受理されません。「被保険者報酬月額算定基礎届 訂正届」を提出します。訂正届には、当初届け出た「誤りの数値」を上段に赤字で書き、下段に「正しい数値」を黒字で記載(いわゆる赤黒処理)します。賃金台帳のコピーや出勤簿など、正しい金額を客観的に証明できる書類の添付が求められます。