インターネットの検索窓には、今なお「相手にバレない位置情報」や「浮気防止GPSアプリ」といった検索語句が溢れています。知恵袋や一部のアフィリエイトサイトでは、「アイコンを隠して相手を監視できる」「通知を出さずに現在地を盗み見る裏ワザ」といった扇情的な情報が流布していますが、現代のモバイルOSの仕様上、これらは技術的にも法的にも完全な幻想です。
AppleのiOSおよびGoogleのAndroidは、プライバシー保護の観点から年々セキュリティを厳格化しています。現在地がバックグラウンドで取得された場合、端末のステータスバーには必ず測位中を示すインジケーター(矢印マークなど)が表示され、定期的に「〇〇アプリがバックグラウンドであなたの位置情報を使用しています。許可を続けますか?」というOSレベルの警告通知が強制表示されます。いかなるサードパーティ製アプリであっても、OSの標準機能を回避してアイコンを不可視化したり、無断で追跡し続けたりすることは技術的に不可能です。
さらに見過ごせないのが深刻な法的リスクです。相手の承諾を得ずにスマートフォンへ位置情報アプリを勝手にインストールする行為は、刑法第168条の2(不正指令電磁的記録供用罪)に抵触し、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される明確な犯罪行為です。加えて、ストーカー規制法違反や民法上の不法行為に基づく損害賠償請求の対象にもなり得ます。「浮気の証拠を掴みたい」という短絡的な動機で導入したアプリが、結果として自分自身を被疑者の立場へと追い込む事態が全国の警察相談窓口で多発している現実に、強く警鐘を鳴らさざるを得ません。