日本サッカー界に深い傷痕を残した「浦和レッズ差別横断幕事件」が発生したのは、2014年3月8日に埼玉スタジアム2002で行われたJ1第2節・サガン鳥栖戦でした。ホーム側ゴール裏の209ゲート入場口頭上に、白地に黒文字で手書きされた「JAPANESE ONLY」という横断幕と、日の丸が掲げられたことがすべての始まりです。
ゲートをくぐるサポーターや来場者によって撮影された横断幕の写真は、キックオフ直後からTwitter(現X)をはじめとするSNSへ瞬く間に拡散しました。しかし、クラブ運営側は試合終了後までこの横断幕を撤去せず、放置する形となりました。試合後の記者会見で当時の社長が「差別的な意図は確認できていない」と釈明したことで、国内外の人権団体やメディア、サッカーファンから猛烈な批判を浴びることになります。
事態を極めて重く見たJリーグは、わずか5日後の3月13日に裁定を下しました。裁定理由は「人種、肌の色、性別、言語、宗教、または出自等に関する差別的行為の禁止」を定めたJリーグ規約第160条違反です。下された制裁は、同月23日のJ1第4節・清水エスパルス戦を「無観客試合(リモートマッチ)」とする前代未聞の処分でした。チケット代の払い戻しやスタジアム関連の営業補償など、クラブが被った直接的な経済損失は約3億円以上にのぼったと試算されています。