穴守稲荷神社と航空業界の結びつきは、表面的な協賛関係を遥かに超えている。戦後、米軍による羽田飛行場の拡張によって社殿の強制退去を余儀なくされた過酷な歴史を持ちながらも、神社は羽田空港の発展と二人三脚で歩んできた。現在でも日本航空(JAL)をはじめとする大手航空各社の幹部や運航管理責任者が、大規模なダイヤ改正や新型機導入、新路線の開設時に社殿へ祈祷に訪れる風景は恒例となっている。
「パイロットとしてコックピットに座る前、時間があれば必ず立ち寄る」と語るベテラン機長もいる。地上数百メートルの滑走路を走る飛行機を支えるのは、高度な機械工学だけではない。人智を超えた自然現象や突発的な気象の変化に対峙する現場だからこそ、最後の拠り所として選ばれるのがこの場所なのだ。京浜急行電鉄が空港線を整備し、直通列車を走らせる歴史的背景にも、この神社への参拝輸送が深く関わっていた事実は見逃せない。